どうせなら、 世界を変えてみたい。

  1. 倉田話

 僕が「暮らしの台所 あがりこぐち」という居酒屋を始めてから、1年ちょっとが過ぎました。全国各地からご来店くださったみなさま、本当にありがとうございます。また来てね。

 僕はこの「あがりこぐち」という場所から、世界を変えていく源流が生まれればいいなと思いながら、日々営業しています。世界を変えていくのはそんなに難しいことではないと信じています。僕が自信をもってそう言えるのは、この世界には、世界を良くしようとがんばっている人がたくさんいると知っているからです。それは飲食業であったり、卸売業であったり、農業、製造業、そして、今までにない仕事を作ろうとしている人たちです。たくさんの世界を良くしようとしている人がいるのだから、世界をより良くできると心の底から信じています。
 
 でももし、彼らが目に見えない敵に打ち破れてしまったら、誰が世の中を良くしてくれるのでしょうか。「ほかの誰かではなく、君がやればいい」と言われるかもしれませんが、僕だけでは、世界を良くすることはできません。世の中を良くしようと思っている人たちと仲間になって、一緒に世界を変えていくことで、現実になります。だからこそ、世の中を良くしようとしている人が欠けてはいけないのです。
 だから、僕は居酒屋を始めました。目に見えない敵に傷つけられても、傷が癒せるように。仲間を求めれば、仲間に出会えるように。つらい顔が、少しでも笑顔になるように。そう願って、あがりこぐちを始めました。
 ひとりでいたくないときや、仕事に疲れてしまったときに、どうぞ来てください。愚痴を聞く店主がいます。名前も知らない隣のお客さんが、笑顔で話しかけてくれます。ちょっとくらい休んでもいいんですよ。普段、みんな一生懸命に頑張ってるんですから。これを読んでるあなたも。
 
 僕はあがりこぐちを「ドラゴンクエスト」に出てくる「ルイーダの酒場」に例えます。主人公が酒場の主人であるルイーダに話しかけると、酒場にいる仲間を紹介してくれて、一緒に冒険に旅立っていく場所です。あがりこぐちは、「出会いと別れの酒場」がコンセプトです。

 あがりこぐちに来てくださったお客さんたちが仲良くなって、別のお店に一緒に飲みに行ったり、新しい仕事を共に創り上げたりする光景が、カウンターの上から広がっていきます。
 隣の席にたまたまいただけの、見ず知らずの人たちが同じお酒が入ったグラスを持ち、楽しそうに乾杯をするんです。その乾杯は世界が変わっていく始まりの瞬間かもしれません。そう思うとワクワクして、胸が高鳴ります。
 すぐに世界を変えられなくても、みんなの努力が次世代に受け継げられ、僕たちの子供や、孫の代で、世界はさらに豊かになっていくでしょう。その歴史の1ページに、あがりこぐちが存在しています。

 この1年で、世界を良くしようとしているたくさんの人々が来店してくださいました。地域の清掃活動に積極的に参加する学生や、商店街を見守っているおばさん、食品廃棄削減に奔走する女の子、「月に家を建てたい」という夢を叶えるために会社を起こした若き起業家。カウンターに座り、世の中を良くしていくために、新しいワクワクを作り出すために、イキイキした表情で悩む姿を見て、僕もまだまだやるべきことがたくさんあると感じます。

 世界を変える一歩を踏み出すことは、実は、誰でもできると思います。一瞬だけ、知らない誰かと乾杯するだけで、世界は変わり始めます。一緒に世界、変えにいきませんか。

倉田 敏宏

くらたとしひろ/1994年福山市生まれ。tachimachi代表取締役。東京のベンチャー企業で働いた後、福山に戻って起業。「暮らしの余白を彩る」を理念に飲食店経営や企画、写真撮影などを福山と東京の2拠点で行う。現在、東京から福山へ訪れるきっかけづくりの企画を進めている。

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