Unknown SETOUCHI vol.4

  1. Unknown SETOUCHI

福山駅の新幹線ホームから見える天守と月見櫓。奥には重要文化財の伏見櫓も見えます。

写真=和田愛 文=前原尚美

瀬戸内の知られざる日常を探して。


福山城

福山駅のすぐ近くにある、国内でも珍しい「駅チカ」な城。 出張ついでや新幹線の待ち時間に、訪れる人もいるようです。 2022年に築城400年を迎える福山城のことを、調べてみました。

城とともに生まれた街
徳川家康が江戸幕府を立ち上げた後、1619年(元和5年)に、奈良の大和郡山から備後にやってきた水野勝成。翌年から、福山城の建設を始めました。大洪水などに見舞われながらも、1622年(元和8年)に完成。天守に加えて、武器庫の役割などを担う櫓(やぐら)を多く備え、約7万8000坪を誇る、国内でも有数の城となりました。城の南側を干拓して開いた城下町を、水野勝成は「福山」と名付けました。

ものづくりの街のルーツ
水野勝成は戦で一番槍をあげるなど、「鬼日向(おにひゅうが)」と呼ばれる勇猛な武将でした。福山藩では、銀札銭札の発行で経済基盤を築いたり、上水道の整備や治水工事、税の免除などに手腕を発揮。ほかにも、い草や綿花の栽培、畳の生産といったものづくりの分野でも、多数の功績を残しています。福山という、ものづくりの街のベースを作ったのが、水野勝成でした。

1966年に復元された天守
1873年(明治6年)の廃城令により、福山城は天守、伏見櫓、筋鉄門、御湯殿などを残し、ほとんどの建物が売却、解体されました。1945年(昭和20年)8月8日の福山大空襲では、多くの文化財とともに、天守、御湯殿などが焼失。現在の天守は、1966年(昭和41年)、月見櫓や御湯殿と一緒に復元されたものです。


高さ80㎝の黄金の烏帽子

「金箔押鯰尾形兜(きんぱくおしなまずおなりかぶと)」は、福山城博物館所有の貴重な変わり兜。正面の朱塗りの円は、水野家の裏家紋「裏永楽銭紋」。黄金に輝く高さ約80㎝の烏帽子(えぼし)が、戦場のどこにいてもその存在を知らしめました。水野勝成が、家臣に贈ったものと伝えられています。

福山城にある水野勝成像

水野勝成は、1564年(永禄7年)、現在の愛知県にあたる三河国に生まれました。徳川家康のいとこにあたります。16歳で初陣を果たし、1638年(寛永15年)、75歳で出陣した島原の乱が最後の戦とされています。1651年(慶安4年)、福山城内で死去。88歳でした。

福山城の重要文化財1/伏見櫓

福山城の南側に位置する「伏見櫓(ふしみやぐら)」は、徳川家康が再建したと言われる京都の伏見城から移築されてきました。現存する最古の櫓のひとつで、国の重要文化財に指定されています。

職人の技術が残る石垣

石垣の角の部分に石を積む「算木積(さんぎづみ)」。直方体に加工した石を交互に積み重ね、石垣の強度を高めています。丸い刻印は、石工が自分たちの担当箇所を表したもの。なかでも、紙一枚入る隙間もないほど緻密に重ねられた伏見櫓下の算木積みは、当時の石工の技術の高さを物語っています。

福山城の重要文化財2/筋鉄御門

伏見櫓の近く、本丸の正門に位置する「筋鉄御門(すじがねごもん)」。扉や門柱には、名前の通り、筋状の鉄板が打ち付けられています。伏見櫓とともに、伏見城からの移築とされています。当時の猫も、梁の上に隠れて昼寝したのでしょうか。

海を渡った福山城

かつて福山城内にあった東長屋門遺構(市指定重要文化財)が、現在も鞆の浦に残っています。明治初期、全国の多くの城が廃城になった時代、民間に払い下げを行っていた福山城内建物の一部を譲り受けたのは、1855 年(安政2 年)創業の保命酒 醸造元「岡本亀太郎本店」です。一旦解体された長屋門は、海路から鞆の浦へと移設されました。

岡本亀太郎本店
住所: 広島県福山市鞆町鞆927-1
TEL:084-982-2126
営業時間:9:00~17:00
定休日:なし

水野家の家紋を施した最中

福山市沖野上町にある、1921年(大正10年)創業の和菓子店、三河屋。戦後まもなく発売したのが、皮に水野家の家紋を施した直径約5㎝の最中「福山十万石 おもだか」。上下の皮に詰められたあんこは、時代とともに改良を加えてきましたが、形は発売当時から変わりません。JR福山駅構内の「おみやげ街道福山」でも販売中。

お菓子処 三河屋
住所:広島県福山市沖野上町4丁目15-27
TEL:084-923-4890
営業時間:9:00~18:00
定休日:不定休

変わり兜モチーフのTシャツ

水野勝成が家臣に贈った変わり兜をモチーフに、アーティストのmakoさんがデザインしたTシャツ。アルファ企画が刺繍を施しました。現在、購入できるのはふくやま美術館と、今回のSTOREHOUSEの会場のみ。

かつての城下町から

福山城から東に向かって歩くと、「城見町(しろみちょう)」という住宅街が広がります。その名の通り、現在も、ビルの隙間から城の姿を見ることができます。

前原 尚美

まえはらなおみ/ALGORHYTHM

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