汗も焦りも吹き出した2018年、夏

  1. mamanohibi

 いやぁ、今年の夏はあとから振り返っても確実に思い出す、忘れられない夏になりましたよね。NPO法人mamanohibi こと「ママ日々」で、育児セラピストとして活動している絵海です、こんにちは。
 例年通りにいかないことが多かったこの夏、甚大な被害を残した「平成30年7月豪雨」に酷暑。毎日、過去最高気温が更新されるニュースを見るたびに、怯えましたよね。週に2回、本業のラジオの仕事で関西に通っているんですけど、40℃を超える大阪を歩いた時、吸い込む空気が体温より明らかに高い ! サウナの中にいるような、逃げ出したくなるような切迫感。移ろいに鈍感な私でも、さすがに異常を感じましたよね。
 テレビでは被災した街の光景に、立て続けに熱中症のニュース。なのに ! 息子を熱中症にさせてしまうという出来事も。母親になって12年になりますが、こんなにも熱中症について調べたことはなかった。そんな親御さん、多いんじゃないかな ? 立てなくなった息子をおんぶして(もう中学生なんですけど ! 重いんですけど ! )病院に行った時に初めて「熱中症って思ったより怖いな」と知りました。そこから、食べ物や生活習慣も見直して、あぁ、なんだか気ぜわしい……。
 そんな中、小学1年生のお子さんが野外活動中に熱中症で亡くなったニュースがありましたね。あれは完全に防げたなぁと、亡くなった子がどんな気持ちで最期を迎えたかと思いながら、その市の市長の会見を見て、憤りに似た感情がこみ上げましたね。 
 ん ? 学校の判断ミスって言ってる ? そりゃそうかもしれないけど、学校って、教育委員会があってその上には市、要するに、市長じゃないの ? いや、ほんとこの際、誰が責任者だとかそういう犯人探しはどうでもよくて、私たち親は、子どもを送り出した後は不安があっても、ただただ無事に帰ってくるのを待つしかないわけですよ。誰もこんな酷暑になると分かってたわけじゃないんだから、誰の責任とか指示とかじゃなくて「人として」考えて行動しないと守れないものがあるわけでしょ。規則だなんだより、命を守ることが最優先、ですよね。
 今回のニュースで親の不安、不信は高まって、私たちのところに遊びに来られるママからも、市に対する多くの声が寄せられました。
 「そもそも、なんでクーラーつけてくれないの」「学校が禁止してるから首回りを冷やすものを持っていけと言っても子どもが持っていかない」「塩分も必要だからスポーツドリンクを持たせたいのに、学校の決まりでお茶しか持っていけない」 。
 まぁ、クーラーは今日明日、すぐできることではないのは分かります。しかし、今回のことで福山市の公立小中学校のクーラー設置率の低さが全国と比べても劇的に低かったことも分かったし(この事件を受けて、福山市のクーラー設置が進むことが発表になりましたね。でも先すぎる)。話は飛ぶけどPC の設置率も全国でワーストランキングに入るとのこと。これだけITの時代になっている今でも、福山市の子どもの教育環境はそういう現状。遅れています。
 「ネウボラ」(切れ目のない家族支援)っていう北欧のスタイルがいいから取り入れようという福山市の取り組みは素晴らしいなと思ったけど、立ち上がった時はほんと笑いましたよ。多くのママから「いきなり『子育て支援課』っていう誰でも『子育てにまつわる課だな』って分かる名前の課から、『ネウボラ推進課という聞いたことない言葉』の課に変わってて、なんのお知らせもなく……。そこから封書が届いて、詐欺かと思って調べました」という話を多く聞いたんです。
 いやいや、頼むよ。赤ちゃんを抱えて寝る時間もなくて体もボロボロに疲れてるママたちに、余計な不安や作業を与えないでよ。いいことをしていても伝え方や発信の仕方がイマイチなのか、やはり市民の感覚と少し違うところが多い。
 あ、でもネウボラについては一言。 日本は、北欧とは税制も国民性もまったく違います。北欧の人たちは高額な税金を払っています。多くのことが違う中で、「良さそう」ってのでそのまま持ってこようとするんじゃなくて、やはりその地域、市民の気質、街の構造、いろんなことを加味してアレンジする必要があるかと。子育て支援課という名前に戻すべきだといまだに一人で思っています。机上の空論になってしまってはもったいないんじゃないかと。税金を納める市民としては、余計なことじゃなくて意味のあることに税金を使って欲しいなと切に願うのです。例えばシングルマザーで朝から晩まで働いて子育てしていたら、平日昼間しか開いていない窓口に行くのは、到底無理ですよね。だとしたら、市内に何箇所もある相談窓口の数を減らして、その分、夜間でもオンラインでも繋がることができる支援を設けてほしい。
 福山市内で起きた虐待事件をきっかけにスタートした私たちの活動なので、本当に必要な支援と、市の支援の内容がなかなか一致しないもどかしさをまだまだ感じます。その他の事業だって「これに数千万円も予算つけるの ? 嘘でしょ ? だったらエアコンやPC に使って欲しいな〜」と、正直そんなふうに見えるものが多くありますが。失礼しました。ずいぶん本題からそれてますね。
 そうそう、クーラーの話。あの問題が話題の頃、ある小学校を訪ねて先生とお話したんです。すると「親御さんから、『子どもたちは暑い中で授業を受けているのに職員室は涼しいのか』というお言葉があったので、職員室のクーラーは授業が終わるまではつけないようにしてるんです」と汗だくで、先生。驚きましたよね。暑さで先生たちのお仕事の生産性が下がる方が問題じゃないですか。でも、なーんか問題の論点がこうやってずれてしまうんだなーということを、感じたんですね。今や、先生の仕事って昔と違って複雑で、仕事量は膨大に膨れ上がってるんです。教員免許の実技にクレーム対応があるってご存知でした ? それでなくても、いじめや不登校にネットトラブルとか、もぅ、大変なんですよ。本来しないといけない業務以外のことが溢れてるのに、暑さの問題もそうですよね。クーラーがないのは先生の責任ではないし、臨機応変に親御さんのご意見に対応できない立場だったりする。となると行政が考え直さないといけないんじゃないのかって話ですけど、私たち親の意見は、学校、あるいは教育委員会に届かないと、ただの不満にすぎないんですよね。自分の意見を声にして挙げる、ということはとても勇気のいることだし、多くの日本人は苦手とすることだと思います。
 でも、確実にそんな日本も今は変わってますよね。この頃多い、私たちからしたら化石クラスの旧世代の方々の、権力を振りかざし続けたニュース。いや、感謝すべき前世代ですけど。その方々が築き上げてきてくださった過去があるから今がある。でも、バトンを受けていく一人一人にも考えや意見、想いがある。右ならえの時代ではなくなっている。時代は動いています。
 何が言いたいかというと、大事な意見をただの不満や愚痴に変えないように、工夫していかないといけないんです。さっきも言ったように、家庭と学校の連携はこれからの教育の現場に絶対に必要になってくると思っています。でも、今の状況じゃ厳しい。クーラーひとつで、そんなクレームが出てるんですから。私たち親は気づかないといけない。夏の豪雨の時に、牛乳が入ってこない時があったんですね。酷暑の日なのに水筒を持って来ていない子どもが多くいたんです。先生方は、飲みものがない子どもたちにお茶を注いでまわって、てんてこ舞いだったと。次の日にはお手紙が配られました。「こういう状況なので、お茶をご持参ください」と。そのお手紙を作成するのも、何百という枚数を刷るのも全部、先生の手を煩わせてるわけです。そして、紙代は税金です。
 今はまるで親がクライアントのような立場になっていて、学校はそこにビクビクしている。だとすると、手を繋いで一緒に子どもを守ることはできない。 
 声を挙げることが大事だと言いましたが、その伝え方も、ファイティングポーズではなく、私も、学校に聞きたいことや意見があるときは「先生すみません、クレームじゃないんでそういう風にとらえないでくださいね」と一言添えるようにしてます。信頼関係ができていれば 、そんな言葉は必要ないのにね。
 相手の立場も考えながら言葉も選んで、そして、次々に起きる問題に、誰のせい、責任ではなく、自分には何ができるのかを考えられる大人が増えたらいいなと思います。
 プログラミングの授業は、まさにそういうことですよ。ロボットの右手を動かすためには、ここをこうして、こうさせる。そこには感情論とか、権力のぶつけ合いとか、そういうものはないですからね。そうか、私たちは学校でプログラミングを習ってなかったから、こんなことになってるのか。今わかった。やれやれ、子どもたちと一緒に学ぶべきですね。そんなこんなでこの夏もせわしなく過ぎていきましたが、疲れを軽減させるというイミダペプチドに出会ったので、渡り鳥のようにこの秋も冬も飛び続けたいと思います。

井口 絵海

いのくちえみ/1977 年福山生まれ。二児の母。NPO 法人mamanohibi 代表。ラジオDJ(KissFM KOBE)。育児セラピスト。

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