発見の木

  1. mamanohibi

「いる」じゃん  作=くどうなおこ 絵=松本大洋 スイッチ・パブリッシング 1600円(税別)

 詩人はそこに「いる」もの、感じられたものを言葉という網を使って、すくい上げるのが仕事かもしれない。そして並べて整えて、「さあ、飛んでいきな」とタンポポの綿毛のように飛ばすのだろう。あなたのところに運ばれた種は、時期が来たら芽を出し、根をはり、伸びて花を咲かせ、実をつけたら次の心に飛ぶのだろう。
 雑誌「MONKEY」11号の「ともだちがいない」というテーマを受けて、「いるじゃん!」と答えた詩人くどうなおこは、幼い頃からテントウ虫やカタツムリが友達だった。詩人の書いた「のはらうた」シリーズは、小さな生き物達の声でいっぱいだ。詩人の息子である漫画家・松本大洋は母の言葉のエネルギーを受けとめて、立ち止まって考えた。母の言葉を生かすため、どんな絵を描いたらいいだろう。そして二人で一冊の本を作った。
 この本を届けたいと願った人々がいて、ここに本が「いる」。そして今、この地上で生きて「いる」あなたのところへ届く。どう感じるかはあなた次第。その時々で本から受ける印象は変わるだろう。何度でも扉を開いて会いに行こう。いつか、あなたの口から「いる」じゃんと、言葉が溢れてくるかもしれない。

井口 絵海

いのくちえみ/1977 年福山生まれ。二児の母。NPO 法人mamanohibi 代表。ラジオDJ(KissFM KOBE)。育児セラピスト。

記事一覧

関連記事

発見の木

『恐竜がいた』 詩:谷川俊太郎 絵:下田昌克 発行:スイッチ・パブリッシング 定価 :1600円(税別) 今、私たちが生きているこの世界に、かつて恐竜が…

発見の木

「みち」 作・絵:阿部海太 発行:リトルモアブックス 価格:1800円(税別) 今までどんな景色を見てきたか。誰と、どんな世界を見てきたか。人生はひとつ…

発見の木

「よるくま」 作・絵:酒井駒子 偕成社・刊 価格:1000円(税別)お母さんは、なんでいつもいそがしそうにしてるんだろう? お母さんは、なんでぼくのそば…