僕たちだからできることをする。
ふくまきとしひこ/伝統工芸株式会社代表取締役社長。1965年生まれ。飲食業界から1989年に伝統工芸株式会社へ入社。2014年から現職。
伝統工芸株式会社は、額縁や屏風、茶道具などの製造会社として創業し、今は家具作りもしています。もともと妻の実家の家業で、お義父さんが先代の社長でした。僕は22、23歳くらいまで飲食業界にいました。一方で、北欧やミッドセンチュリーの家具や雑貨が好きで、インテリアショップ巡りをしたり、ビンテージを見に行ったりしていました。
1987年にこっちに戻ってからも飲食業を続け、1989年に伝統工芸株式会社に入社しました。僕にとってこの仕事は、今まで持っていた包丁とキャベツが、カンナと木に変わったという感覚です。
木の表情が変わる瞬間が好き
伝統工芸株式会社は、2011年から家具づくりを始め、2015年からはオリジナル家具の展開を行なっています。全国に70〜80ある卸先を、妻と2人で営業に回っていることが多いですが、今でも時々、工場に入ることがあります。集中して木に触れる時間は、やっぱり好きですね。木材を板にして、板を割って、ムラ取りをして、板目や柾目を見ながら、どの方向に鋸(のこ)を入れるか考える。木を並べて表情を見たり、オイルを塗ってその表情が変わる瞬間がすごく好きです。
オリジナル家具を始めたことは、自分たちの仕事の幅を広げるという意味でもよかったです。以前も家具のOEM生産をやっていましたが、オリジナル家具を作ることで、自分たちの技術力も磨かれました。このデザインはどんな意図なのか、図面の背景を知ることでオリジナル家具作りに生かせるのが、よかったところです。
会社は創業以来、ずっと上下町にあります。最近社内に目をやると、働き手不足や、今やっている仕事の認知がまったく広がっていない状況を知りました。そこで、この地域の人たちに、伝統工芸株式会社がなにをする会社かを伝えたくて、1年に1回イベントをやっています。名前は「木になる生活展」。何店舗か出店者さんも集めて、自分たちがどういったモノ作りをしているのか、製品を見てもらい販売をしたり、ワークショップをしたりしています。少し前まではそんなに思い入れもなかったのですが、イベントをしたり、地元のイベントに出店するようになって、「この街っていいな」と思うようになりました。
フレームをインテリアとして提案する
家具だけでなく、もちろん今も額縁を作っています。僕たちは、額縁のことをあえて「フレーム」と呼んでいます。額縁というと、書や賞状を入れる額を思い浮かべる人が多いと思いますが、あれは「インテリア」ではないですよね。僕たちが目指しているのは「インテリア」。壁にフレームや絵があるのとないのとでは、空間の雰囲気はまったく違ってきます。額縁作りをルーツに持つ僕たちだからこそ、フレームを使ったインテリア提案ができると思っています。
伝統工芸株式会社
広島県府中市上下町で、額縁や屏風、茶道具などを作る木製品メーカーとして創業。2011年から家具作りをスタート。
住所:広島県府中市上下町階見1503
TEL:0847-62-3377
営業時間:9:00~17:00
定休日:土曜日、日曜日
https://www.dentou-kougei.co.jp