鞆の浦〜仙酔島をつなぐ船を作った会社。
本瓦造船株式会社
累計600隻以上の実績を持つ造船会社。本社工場では船の修繕を、第二工場では設計や製造などを行う。2019年で創立70周年を迎える。
本社工場
住所:広島県福山市鞆町後地1717 TEL:084-982-2500
第二工場
住所:広島県福山市鞆町後地242-1 TEL:084-982-1122
https://hongawara.co.jp

本瓦造船は、国内向けのタンカーや作業船、フェリーなどの小型船を年間10隻ほど手がける造船会社です。小型船は船体に曲線が多くなるので難しく、手間がかかります。
船は何枚もの鋼板をつないで作りますが、複雑な流線形を出すのは機械では無理で、人の手がたよりです。ガスバーナーで焼いて鋼板を膨張させ、水で冷やして曲げる撓鉄(ぎょうてつ)という特殊な技法を用いて、手作業でパーツを作ります。ようやく完成したいくつものパーツを専任スタッフが組み立てて、微調整を繰り返して完成に近づけていきます。
本瓦造船は、「鞆の浦と仙酔島を行き来する『平成いろは丸』を作った会社」と言うと、わかりやすいかもしれません。平成いろは丸は、龍馬が乗った蒸気船「いろは丸」を模した船で、朝7時から夜9時まで、20分間隔で約5分の航海を 楽しめます。
漁師のための漁船作りがルーツ
戦後間もない1949年、祖父が個人で木造船業を営み始めたのが本瓦造船の始まりです。鞆の浦は漁業が盛んな町でしたから、漁船作りを仕事にするのは自然な流れだったようです。造船学校で設計などの知識を得た私の父でもある2代目が、新たな技術を投入するなど、さまざまなニーズに応えられる企業に成長させていきました。今でも、祖父や父が作った船の作り変えを依頼されることがあり、感慨深いものがありますね。
2012年から兄が社長に就任し、私は専務として、人事や総務などを担当しています。社員は約70名。建築や自動車といった異業種から転職してくる人もいますし、海外からの実習生も受け入れています。言語の壁を乗り越えるのは難しいですが、勉強したり貼紙をしたり、みんなで工夫して、協力して仕事に打ち込んでいます。
船体を設計する設計技術者には、限られたスペースや総トン数の中で、空間を大きく確保する工夫が求められます。スピードやサイズごとに入港の条件や規律が異なるので、それらすべてをクリアしながら、クライアントの要望を満たす設計図を描きます。硫酸や化学薬品といった、取り扱い注意の荷物を運搬するケミカルタンカーは、通常の貨物船とは基準が異なり、鉄以外の材料も扱うので、より専門的な知識や技術が求められます。
これまでにいろんな船作りに挑戦し、その都度、課題をクリアしたことで技術力はどんどん上がっています。うちの設計技術者は難しければ難しいほど燃えるみたいで、これからもどんどん新しい船を作り続けていきたいですね。
人を通じて鞆の浦の良さを再確認
新しい船を初めて水に触れさせる進水式などは華やかで、たくさんの関係者が来られます。市外から来られた方には鞆の浦を観光してもらい、クライアントとは馴染みのホテルで食事をして、瀬戸内の味や景色を楽しんでもらいます。私にとっては小さい頃から見慣れた景色ですが、みなさんが喜んでいるのを見ることで、改めていい街と実感しています。

ほんがわらあゆむ/本瓦造船専務取締役。1978年生まれ。3人兄弟の末っ子。広島市内でサラリーマンを経験し、2008年本瓦造船入社。2人の子を持つ父親。