高田優子/デザイン書家

  1. ヒトモノ

自分らしい表現を求めて行き着いたもの。

 漢字だけでなく、英字やイラストが書かれた華やかな色使いの作品。よく目にする書道とは少し異なるデザイン書道を書く、フリーランスのデザイン書家、高田優子さんに、その魅力を伺いました。

 デザイン書家の仕事のひとつに、看板や商品のパッケージといった商業文字を、企業や個人からの依頼を受けて書く仕事があります。依頼主に、その商品やサービスをどう見せたいか、どんなイメージに仕上げたいかなどをあらかじめ伺って、それに沿う文字を何パターンか提案し、作品を仕上げます。
 通常の書道では、漢字の「へん」と「つくり」のバランスをとることが良いとされていますが、デザイン書道はそうとも限りません。漢字に対する固定概念を取り払い、あえてバランスを崩して文字を組み立てていきます。そうすることで、魅力ある表現が生まれるのです。それでも大事なのは、可読性を備えていること。商業文字である以上、読めなければ意味がないからです。見た人に「なるほど」と、依頼主が伝えたかった意図や意味を感じ取ってもらえることをいつも心がけています。

自分らしい表現で書を続ける
 もう一つ大事なのが、デザイン書道の表現は自由でありながら、自由になりすぎてしまっては、書道とは言えないということです。デザイン書道の基礎は古典書道にあり、書道の基本が身に付いていなければ、本当に豊かな表現はできません。
 私は古典書道を学び、書道会にも所属していました。もっと自分らしい表現で書を続けていきたいと思い、行き着いたのがデザイン書道でした。当初は、書道会に所属しながら東京や大阪でデザイン書道を学んでいましたが、2015年、デザイン書道に専念しようと、それまでお世話になった書道会をやめ、フリーランスのデザイン書家として仕事を始めました。
 商業文字を書くことに加えて、2017年からは大勢の人の前で立って作品を書くライブパフォーマンスをする機会も増えました。今年の「福山ばら祭り2018」ではキックオフイベントでライブパフォーマンスをさせていただき、JAZZの生演奏をバックに、「薔薇」という文字を書きました。福山には書道美術館があり、書道に携わる方がとても多く、書の歴史が深い街。私にできることは、伝統を重んじながらも、もっと多くの人が書道に興味を持てるような、新しい表現を模索し続けることです。

作品ができあがる一体感
 ライブパフォーマンスは、ただ書くのではなく、書く姿をどう見せるかも重要です。文字にはもちろん集中しますが、自分の動きをどう演出するかにも意識を向けています。
 こうしたパフォーマンスは、私が書く雰囲気やライブ感を見る人に体感してもらいながら、作品ができあがっていくという一体感が生まれるのがいいところ。立って書くと遠くにいる人々にも見てもらえるので、文字ができあがっていく様子を一人でも多くの人に見てもらえたらと思って、一画一画、書き進めています。

たかたゆうこ/デザイン書家。日本デザイン書道作家協会会員。1970年生まれ。2015年よりフリーランスのデザイン書家として活動開始。依頼を受けて商業文字を書いたりパフォーマンスを行う。2018年10月30日(火)~11月4日(日)、広島市の「ギャラリーG」で個展「愛をつなぐ」を開催。福山市の「さくらデザインビルド」にて、月2回レッスンを行う。

山崎 小由美

やまさきさゆみ/ALGORHYTHM

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