柴田崇行/刃物屋

  1. ヒトモノ

「切れ味」で感動させる。

Photo : Visti Kjar

しばたたかゆき/株式会社アイロンクラッド代表取締役。1979年生まれ。包丁の試し切りをするうちに料理が趣味に。愛車はポルシェ「911」。

 海外から、製造現場や商品を見にくる足が絶えない、人気の刃物店が福山にある。国産の包丁などを、海外に輸出する株式会社アイロンクラッドは、包丁の販売や製造、刃物の研ぎ直しなどのメンテナンスサービス、商品プロデュースも手掛ける。人気の秘密を、代表の柴田崇行さんに聞いた。

 もともと、国産の包丁を輸出する卸売業や包丁の研ぎ直しなどのメンテナンスサービスをしていましたが、5年ほど前から包丁の製造をはじめました。当時、国外への包丁の供給が追いついていなかったことが、はじめたきっかけです。
 研ぎ直しをしていたので、加工をするのに必要な機械などはありましたが、それでも、鍛冶屋さんや専門メーカーのような十分な設備もなければ、生産体制も取れません。うちの包丁は、鍛冶屋さんに依頼して、打って焼き入れしてもらったものを、自社で研磨加工をして販売しているものです。
 それでも、やるからには、どこか1つは負けない特長を作ろうと注力したのが、包丁の「切れ味」でした。研ぎ直しサービスを長くやってきたこともあり、切れ味に関しては豊富な知見がありました。切れ味は、包丁の本質でもあります。そこだけは120点を目指して生まれた包丁が、「甲鉄」というシリーズです。
 甲鉄は、生のニンジンも軽く切れるほどの切れ味。刃元から刃先にかけて、全体に力が行き届く形状をしています。峰に人差し指を置いた感覚や、柄を握った時の馴染む感覚など、何度も調整を繰り返し、包丁に求められる形状にたどり着きました。

人を感動させる一流の仕事とは?

 仕事には、「プロ」と「趣味」、そして「一流」の3種類があると考えています。お客さんを満足させるのがプロの仕事。自分が満足するのが趣味の仕事。一流は、さらにレベルが高い、お客さんを感動させる仕事です。
 最初から100点を目指すと、最終的には80点に留まってしまい、お客さんを感動させることはできません。ほかの部分がたとえ70点、80点だとしても、1つでも120点を作り出せば、お客さんを感動させられる。甲鉄の切れ味は120点。僕は、お客さんを感動させられる一流の仕事をしたいんです。
 2018年に始めた「West Japan Tools」は、備後地域の高い技術力を持つメーカーと連携し、商品を開発するプロジェクト。たくさん売ることを前提にしたものづくりではなく、基本的には自分たちが欲しいと思ったものを作っています。
 いつでも大切にしたいのは、その商品の本質はどこにあるか、お客さんが本当に求めているもの、そして自分たちが本当に作りたいものはなにか。こうした視点を忘れないことが、お客さんを感動させるものづくりにつながると思っています。(文=山﨑小由美)

株式会社IRONCLAD
刃物の輸出や販売、研ぎ直し、製造などの刃物事業と「West Japan Tools」の商品プロデュースも手掛ける企業。従業員数7名。
住所:広島県福山市神辺町新湯野64-4
TEL:084-962-5222
営業時間:10:00~18:00
定休日:土曜日、日曜日
https://ironclad.co.jp

山崎 小由美

やまさきさゆみ/ALGORHYTHM

記事一覧

関連記事

掛谷康樹/惣堂窯

15年ぶりに会った先生の焼き物。高校3年生の時、選択科目で1年間だけ陶芸の授業があった。15年前の話だ。その時教えてもらっていた先生が、話やすくてまぁまぁ好きだ…

中尾圭吾/ジンジャーダイヤモンド

ここ7年間風邪をひいていません。なかおけいご/ジンジャーダイヤモンド店長。1970年生まれ。身体に優しいてんさい糖を使ったジンジャーシロップ店を経営。大きく体調…

北村和文/協同組合 福山卸センター

あまり知らない卸町について。きたむらかずふみ/協同組合 福山卸センター専務理事。1951年生まれ。大学卒業後、協同組合事務局員となる。以来、44年に渡り卸町の移…

岡信太郎/柑橘行商人

「好き」を仕事にしていい。おかしんたろう/ぽんぽこらんどスタッフ。長崎県出身。1989年生まれ。2015年愛媛県にある離島、岩城島に移住。岩城島で育てた柑橘類を…

大山信和/オオヤマ塗建

こなすだけでは「仕事」とは言えない。おおやまのぶかず/オオヤマ塗建 代表取締役。1976年生まれ。1995年におかやま山陽高校卒業。土木管理の仕事を経て…