桑田真由美/桐箱メーカー代表

  1. ヒトモノ

桐でできた宝箱。

くわだまゆみ/曙工芸株式会社 代表取締役社長。1962年生まれ。生活に近い視点から、桐箱の新たな用途提案を行なう。今では娘も会社を手伝っている。

 福山市新市町にある桐箱専門メーカー、曙工芸。商品を入れるギフトボックスとしての桐箱や、箔押しの装飾を施した乳歯ケースといったオリジナル商品も作っている。木工の街、府中で、今も手作業で桐箱を作り続ける、曙工芸代表の桑田真由美さんを訪ねた。

 曙工芸の始まりは1972年。父の代から、桐箱の生産や加工、オーダー対応まで自社で行っています。桐箱作りは、すべて手作業。あく抜きし、乾燥させた木材を、製作する箱のサイズに合わせてカットすることから始まります。組み立てて箱が出来上がったあとも、文字入れや研磨、装飾など、いくつもの工程を経て、1つの箱を作り上げています。
 私は服飾学校に4年間通い、卒業した当初、洋服のデザインをして働いていましたが、1989年の結婚を機に家業を継ぎました。洋服のデザインをしていたことは、オーダーメイドの桐箱作りや商品提案など、今の仕事にも役立っています。
 2011年、曙工芸は製造に特化させる形で、新たにピアパッコという桐箱のブランディングを手掛ける販売会社を立ち上げました。桐箱にどんなものを入れたくて、どんな場面で使うのか。桐箱に入れるものをより素敵に見せるには、どんな形状がいいかなど、専門メーカーの視点から桐箱の提案ができないかと考えたからです。
 桐箪笥でも知られるように、桐は高級材として扱われてきました。桐箪笥は少なくなりましたが、桐箱をオーダーするということは、中に入れる商品をより良く見せたいという意図があってのこと。だからこそ、商品価値を高めることができる桐箱を提案できればと考えています。

ものづくり企業と一緒に

 2019年5月には、福山ブランドに認定されました。子供の抜けた乳歯を保管しておく乳歯ケースを中心に、全国からたくさんの注文をいただいていますが、福山ではほとんど知られていません。こんな企業があると、地元の人々にも知ってもらいたいという思いがありました。
 今後も、アイデアを製品化し、新しい桐箱を発信していきたいと思います。福山は、繊維や木工、鉄鋼も盛んで、これだけ第一線のものづくり企業が集まった街は、なかなかありません。ほかの企業ともつながりを持って、一緒に新たなものづくりができれば。みなさんと一緒に、福山を盛り上げていけたらうれしいです。 (文=山﨑小由美)

曙工芸株式会社
1972年創業。小ロットやオーダーメイドにも対応する桐箱専門メーカー。
住所:広島県福山市新市町上安井368-1
TEL:0847-51-5215
営業時間:8:30~17:30
定休日:土曜日、日曜日、祝日
https://piapacco.com

山崎 小由美

やまさきさゆみ/ALGORHYTHM

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