「これからの話」を、誰かと。

  1. ヒトモノ

こがだいすけ/FOREVER&COMPANY代表取締役。1974年福岡生まれ。20年間の飲食業を経て独立。独自のアイデアとセンスはメニュー作りにとどまらず、自ら作り上げたこだわりの店内は、細部にまで楽しさが散りばめられている。

今回は、STOREHOUSEを運営する藤田直史とFOREVER&COMPANYの古賀大輔さんが話しました。

2018年1月に福山駅前にオープンしたゲストハウス「SETOUCHI. KNOT」オーナーの古賀大輔さん。生い立ちや仕事、そして、福山のこれからについて話しました。

藤田:生まれは福山ですか?
古賀:親が転勤族で、生まれたのは福岡県。その後、 佐賀県 、岩手県、 高知県、岡山県いろいろ住みました。
藤田:僕も同じ。四国や関西、九州などいろいろ移動しました。
古賀:子供の頃の環境って人格形成に大きく影響するよね。藤田さんに親近感が湧くのは、似たような環境で育ったからかな。当時は3、4年ごとに移動して、ほんと嫌だったんですけど。でも、人を客観的に見るいい経験になりました。今思うとその経験が今の仕事に役立っている気もするな。
藤田:その土地にやっと慣れた頃にまたゼロから。新しい場所で生き残るためにどうしたらいいかをだんだん考えるようになって、自分のアピールの仕方も覚えたり。あと、人間関係を観察したりもするようになりましたね。
古賀:僕は1992年に大学で福山にやって来て、アルバイトで飲食業界に入って、そのあとそのまま就職して。20年間色々学ばせてもらって、2015年に独立してカフェ「FOREVER COFFEE MARKET」をオープンした。福山に個性がある店がもっと増えるといいなと思うよね。
藤田:確かに少ないですよね。
古賀:みんな街をもっと俯瞰して見ることが大事じゃないかなと思う。その上で「お客さんや関わる人を楽しくさせたい」という考えがあれば、自然と個性ある店になるかもしれないよね。福山の人って両サイドにある尾道や岡山を無意識に意識してるのがある。外から来た者からすると、比較なんてしなくていいのにと思うんだけど。
藤田:僕たちは2000年から卸町でSTOREHOUSEというイベントをやってるんだけど、本当はイベントが必要ない街がいい街だと思うんです。街のモチベーションを上げるためのひとつの手段としてやってますけど、本当に楽しくて素敵な日常が当たり前にあれば、わざわざイベントして人を集めるなんてしなくていい。日常的に人が動いて、人の流れができて、あちこちで経済が回るというのが理想ですね。
古賀:その通り。でも「イベントをやってる本人が言う?」ていうのはあるけど(笑)。
藤田:福山って道も綺麗で生活に必要なものは大体ある。新幹線が停まる街ってだけで、すごいこと。財政も破綻していないし立派な街ですよ。だけど「福山はなんにもない」ってみんな言う。恵まれた街だからこそ、危機感が薄いのかもしれないね。

初だろうとどうでもいい
古賀:
僕は20年間飲食業界にいて、新しくゲストハウス「SETOUCHI.KNOT」を始めるにあたって、なにを発信するかを時間をかけて考えました。ここは福山なんだけど、福山を掲げるのも違うなと思って。さっきの話にもあったけど、他人と比較しすぎる人が多いじゃないですか。ゲストハウスを始める時も「この辺りでは初めてのゲストハウスですか?」って質問がたくさんあったけど、知らないよね。そもそも調べてないから(笑)。初だろうとほかにあろうと、そこはどうでもいいんですよ。岡山も倉敷も尾道も、それぞれ良さがあって、福山が真似することでもない。ゲストハウスは「SETOUCHI. KNOT」と名付けました。世界から見た大きなくくりの「せとうち」の発信につなげて行きたいと思って。
藤田:それで「FUKUYAMA. KNOT」じゃなくて「SETOUCHI. KNOT」。
古賀:そうそう。福山じゃなくて「せとうち」をどう楽しんでもらえるか。「KNOT」って、結び目や船の速度っていう意味があって、いいなと思って。人、もの、ことを結ぶことができたら。海外からのお客さんも多いけど、福山に来た人が「この街はよかった」と思って帰ってもらえるように。
藤田:「福山よかった」よりも「なんかいい街だった」という印象があって、その場所が結果、福山だったってことですね。
古賀:そんなイメージです。
藤田:内装は自分たちで?
古賀:外国にある僕の好きなホテルからイメージしたり、仲間と一緒に考えて。コンセプトは「オリジナル」。明け方まで壁塗ったり、自分たちでできることはできるだけ自分たちで。既製品だと、どっかに同じのあるじゃないですか。家具もオリジナルで、このソファは福山のデニムを使いました。福山の大工さんや鉄の作家さんとみんなで作りました。
藤田:ゲストハウスと一緒にオイスターバーを始めた理由は?
古賀:広島に来る人が、何を求めて来るかを考えたんですよ。県外から見た広島のイメージって断トツ「お好み焼き」ですよね。それに続いて「牡蠣」。どうせなら新鮮な生牡蠣を年中食べさせたいと思って、オイスターバーにしました。福山駅前でお酒を飲める場所を作りたくて、飲んでそのまま泊まれるように、代行を呼ぶよりも安くラフに泊まれる価格に。

心が豊かになる街をつくりたい
藤田:
豊かな暮らしってなんだろうって思うとやっぱり「楽しさ」ですよね。大きな幸せがドカンドカンとあるじゃなくて、ちょっとした幸せが、ちょっとした日常にあって。うちの家具も日常に寄り添う、そういう時間のお手伝いになればと思ってます。STOREHOUSEは、豊かな暮らしを楽しむきっかけづくり。本当はイベントがなくても、日常に楽しみが溢れることがいいと思います。
古賀:僕も同じで、心が豊かになる街を作りたいと思うよね。風景が変わったから豊かになるとは思っていなくて。見た目だけじゃなくて、お店づくりの思いに心が動き、親しむように感じられる人が増えたら。福山で出会ういろんな人の話を聞いて感じるけど、街を思って動いてる人がたくさんいて、今すごく良い流れになってるよね。うちの展開もまだまだこれから広がるので、楽しみにしてて下さい。

SETOUCHI.KNOT
カフェ併設のゲストハウス(3300円〜/1名1泊)
FOREVER CAFE&OYSTER BAR
肉も野菜も安心して食べられるメニューがたっぷり。パンチが効いたスイーツが人気。夜は1年中牡蠣が食べられる。
住所:広島県福山市三之丸町4-16
TEL:084-944-3245(SETOUCHI.KNOT)
084-931-8388(FOREVER CAFE&OYSTER BAR)
営業時間:11:00〜17:00
18:00〜24:00(L.O 23:00)
http://setouchiknot.co.jp

井口 絵海

いのくちえみ/1977 年福山生まれ。二児の母。NPO 法人mamanohibi 代表。ラジオDJ(KissFM KOBE)。育児セラピスト。

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